赤城山の四季

ヤドリギ伝説 ~愛が始まる丘  赤城山~


2013.03.05(火)


赤城山周辺では標高1,000メートル付近から見られるミズナラの木立ち。冬になり、葉を落としたミズナラの枝の先に、鳥の巣のような、緑色の小枝のかたまりを見ることがあります。それがヤドリギです。日本ではあまり知られていませんが、欧米ではヤドリギの不思議な生態から、神秘的な植物としていろいろな伝説があります。現代でもヤドリギの下でキスをすると永遠に結ばれる、そんな言い伝えも残っています。


赤城山 ミズナラの大木とヤドリギ

 ヤドリギはミズナラなどに半寄生するビャクダン科の常緑樹で、宿主のミズナラの枝から水分やミネラルを吸収して生育します。宿主のミズナラが青々と茂る時期にはあまり目立ちませんが、ヤドリギは冬でも紅葉や落葉がないため、木々が葉を落としきった冬~春の赤城山では、ヤドリギの緑のかたまりをすぐに見つけることができます。昔は寄生して宿主にダメージを与える存在と思われていましたが、今では、厳しい冬には様々な小鳥たちがヤドリギの実に集まることから、森の豊かな生態系を支える役目を果たしていると考えられています。ヤドリギの種は粘着質の繊維につつまれていて、小鳥たちのフンに混ざって樹上に落ちると樹皮に張り付き、そこで発芽して寄生が始まります。
 ヤドリギの成長は非常に遅いため、赤城山では樹齢の長いミズナラの大木だけに寄生することができます。


オレンジの実をつけたヤドリギ

欧米に伝わる神秘的な言い伝え

Kissing-Ball 冬でも青々と葉を茂らせ、地に根を張らずに樹上に寄生する不思議な植物ヤドリギについては、欧米では古くから特別な植物と考えられており、様々な神秘的な伝統や習慣が広く言い伝えられています。
 北欧神話の「エッダ」ではオーディンとフリッグの子バルドルを殺める武器に使われ、フリッグの涙はヤドリギの実になり、愛をもたらす象徴になったとか、冬には妖精たちが緑のヤドリギに移り住んでいるという話もあれば、地方によって薬用だったり雷よけだったり魔よけだったり。
 現代でもヤドリギは、モミの木やヒイラギ、月桂樹やローズマリーなど、他の常緑の植物と並んで欧米のクリスマスリースの重要な飾りのひとつです。


女子はヤドリギの下でキスを待つべし。

姫百合駐車場前のヤドリギ 「エッダ」の様々なバリエーション中には、ヤドリギの木の下を通るカップルはバルドルを偲んでキスを交わすことになり、愛の象徴となったというエピソードがあります。この話がルーツになってか、現在もヤドリギのクリスマスリースの下で女性に出会ったら、男性はその女性にキスをする、そしてヤドリギの下でキスをした二人は永遠に結ばれる、あるいは結婚の約束を交わしたことになる。そんな言い伝えが広く存在します。
 ヤドリギのクリスマス飾りの下で意中の男性を待ち伏せする女性もいるとかいないとか。他の木々が葉を落とす中、真冬でも緑色の葉を茂らせ実まで実らせることがまた、永遠を連想させたのでしょう。アメリカやイギリスでは、ヤドリギなどで作った球状の飾りのことを「kissing ball」(チュー玉)と呼ぶとのこと。クリスマスなどにはそれを飾り、永遠を誓わないまでも、ハグやキスで愛情や友情を深める習慣があります。

 ヤドリギの下で永遠を誓うキスをする・・・略して「ヤドチュー」と呼ぶことにしましょう。
 赤城山には天然の「kissing ball」がたくさんあります。さあ、意中の男性を誘って赤城山へヤドチューにでかけましょう。
 県道4号赤城を登り、赤城ふれあいの森の入り口に位置する「姫百合駐車場」の向いにあるミズナラの木立ちを見上げましょう。ミズナラの枝に、緑色の塊が。それがヤドリギです。御急ぎの場合は、ここで済ませましょう。ただし、ギャラリーが多いヤドチューポイントです。駐車場や山頂行きの車を多少気にせざるを得ないでしょう。
 この周辺の標高約1,000メートル付近から標高1,200メートル付近にかけて、車道の両側や、登山道周辺にいくつものヤドリギを見つけることができます。この駐車場からは荒山・鍋割山への登山道がつづいています。ハイキングがてらならば付近で丁度良いヤドリギを見つけて。
 あるいは爽快な牧場の眺めとともにロマンチックに決めるのでしたら白樺牧場の赤城山総合観光案内所まで、もう少し県道4号線を登っていきましょう。

ヤドリギMAP

>荒山・鍋割山登山ルートはこちら


男子はイチゴを摘むべし。

赤城いちご狩り もし、「ヤドチュー行こっか」などと誘われ、即答OKできる男性には是非とも実践してほしい、ヤドチューの正しい作法があります。
 1820年に書かれたワシントン・アーヴィングの「スケッチ・ブック」の一編には、ヤドリギの下のキスについて、「若い男性は茂みのベリーを摘んでからでないと、ヤドリギの下の女性にキスをする特権を得られない、もしも茂みのベリーがすべて摘み取られてしまったあとではキスをしてはならない」と書かれています。これは、現代の欧米ではすっかり忘れ去られ省略されてしまった作法で、なるほど、米国での高い離婚率もベリー部分を省略したからかと、納得です。
 幸いにも、赤城山の裾野周辺にはたくさんのイチゴ狩り農園やブルーベリー農園が存在します。摘んでも摘んでもつみきれないほどのストロベリーやブルーベリーがたわわに実っています。古式ゆかしく永遠を誓うために、是非ベリー狩りからヤドチューへと、デートを組み立てましょう。
 イチゴ狩りのシーズンは12月~6月、ブルーベリーは7月~8月下旬となります。茂みのベリーが容易に摘めそうもない9月~11月の期間は、とりあえず梨か葡萄か林檎を摘んで当座をしのぎ、シーズンを待ちましょう。

>>ぐんまグリーン・ツーリズム 観光果樹園の紹介


愛の始まる丘 赤城山

 前橋在住の詩人・泉麻里がヤドリギについて詠んだ詩があります。

「宿り木の下で」 泉麻里

待っていたよ

つづらに折れた
長い道の果ては白樺の丘
背伸びをすれば
空も 星も 夢でさえ
この手が届くから

約束の言葉は
ここにあるよ
大切に温めてきたんだ
宿り木の下で
君に伝えたい
ずっと ずっと一緒だって
君に伝えたい


赤城山総合観光案内所のヤドリギこの詩に登場する「白樺の丘」。白樺牧場や周辺の山々が一望できる小高い丘にある赤城山総合観光案内所周辺にはミズナラの大木があり、ヤドリギが寄生しています。ここが愛の始まる丘。絶好のヤドチューポイントです。
>前橋市 赤城山総合観光案内所
4月中旬~11月中旬まで無休


二人で参拝、愛のパワースポット赤城神社

 山頂の赤城神社は、赤城山の神様になった赤城姫の伝説がのこる、女性の願いを叶えるパワースポットです。ヤドリギで永遠を誓った後は、赤城神社で縁結びの御祈願を!

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