赤城山の四季


紅葉の秘湯に憩う 赤城温泉/老神温泉


2011.09.21(水)


赤城温泉の秋10月中旬に山頂エリアで見ごろだった紅葉は、次第に裾野の渓谷に下りてくる。赤城山裾野の2つの名湯、赤城温泉と老神温泉では10月の下旬~11月上旬に燃え上がるような美しい紅葉を目にすることができる。
温泉宿の名湯にくつろぎ、紅葉を愛で、山野の恵みに舌鼓をうつ。一年でもっとも贅沢な秋の夜長を楽しむ。


赤城温泉

鮮烈な紅葉をたたえた山肌を四方に望む。
喧騒から隔絶された秘湯で、渓流のせせらぎに包まれる。

秋の赤城温泉郷 標高900メートル、赤城山南面の大自然に抱かれた温泉郷。4軒の温泉宿が集まる赤城温泉地区と、近くに一件宿の忠治温泉忠治館、滝沢温泉滝沢館が点在する。周囲には温泉宿のほかには住居も無く、まさに深山の秘湯の趣。宿の傍を流れる荒砥川の心地よい沢音に、野鳥のさえずりが響きわたる。
 新緑から雪景色まで、移ろう赤城温泉の四季には折々の楽しみがあるが、秋は清流に紅葉がかかり、格別の魅力がある。色づいた山肌を眺めながら上州の薬湯に体を沈め、考えることを止めてただ流れる時間に心身をまかせる。秋の赤城温泉は”癒やし”という言葉だけでは不足する。

そして、求めれば赤城山の大自然はすぐそこにある。ここを拠点に山歩き。紅黄に色づく木漏れ日も満喫したい。赤城随一の落差50メートルを誇る不動大滝までは徒歩50分、自然歩道のつり橋から荒山山頂へは3時間ほど。深山の紅葉をこころゆくまで堪能する。
 >>登山ルート 不動大滝
 >>登山ルート 荒山

この季節の夕食はまた格別だ。実りの季節をむかえ、地元の野菜や山の幸・川の幸をふんだんに使った郷土料理や会席料理など、各宿が趣向を尽くしてもてなしてくれる。


歴史ある濃厚な薬湯

古墳時代、崇神天皇の第1皇子、東国の治定にあたった豊城入彦命の開湯とされ、古くから上州の薬湯とたたえられる名湯。温泉の守護仏・薬師尊石像は応仁元年(1467年)の作で、新田義貞や国定忠治の一党も湯治に訪れたと伝えられる。元禄2年(1689年)前橋藩主・酒井雅楽頭が「諸人人助けのため」として湯小屋を作らせたのが温泉宿の始まり。
無色透明で自噴した源泉は浴槽に至ると空気に触れて茶褐色に変化する。湯船や床は、凝固した湯花に赤く覆われて、まるで岩肌のよう。四方を山に囲まれた渓流沿いの温泉宿で、100%かけ流しの濃厚なにごり湯に癒される。

泉質:カルシウム・マグネシウム・ナトリウムー炭酸水素塩温泉(中性低張性高温泉)など


かかあのじり焼き

働き者で控えめな上州のかかあが「こじょうはん(おやつ)」や「夜食」として家族のためにこしらえていた素朴なお焼きが『じり焼き』だ。
赤城温泉の周辺はいわゆる宿場街ではなく、静かな大自然そのもの。夜長は宿でくつろぐのが赤城温泉流。そんな夜長の夜食にと、各宿が「じり焼き」の提供を行っている。1皿3個入りの800円で、口にすることができるのは宿泊客だけ。
粉の食文化が豊かな群馬県内各地に伝わる「おやき」や「焼きもち」だが、生地や具、味付けに作り方まで地域で異なり、それぞれ家庭の味がある。じり焼きもそんな地域・家庭に伝わるお焼きのバリエーションのひとつ。
赤城温泉の各宿を営む家族の味、もちろん一軒ごとに味が違う。大切に味わいたい。


赤城温泉郷のお宿

山懐の隠れ里に、四軒の温泉宿 >>赤城温泉郷
伝統の名湯を守る >>滝沢温泉 滝沢館
心和む古民家 >>忠治館


老神温泉

利根川支流随一の美景、片品渓谷を見渡す温泉街。
紅葉に染まる”美人の湯”、絶景の露天風呂は宿の自慢。

火山活動で生じた凝灰岩の岩肌を片品川の清流が侵食した奇観・片品渓谷に沿って、老神温泉の街並みがつづく。赤城山の北面から、遠く尾瀬に連なる山々を望む老神温泉。窓から見下ろす渓谷には両側に真っ赤に紅葉した山肌が迫る。
薗原ダム上流の片品川の両岸にある老神温泉の街並み。18軒の温泉旅館・ホテルがあり、そのすべてが源泉を使用している。昔から肌に良いとされ、美人の湯とたたえられてきた老神温泉、露天風呂から渓谷の紅葉を見下ろして、じっくりと美肌を磨く。
湯めぐり手形は、1,500円で16軒の宿の温泉から3箇所を選んで入浴できる。老神温泉には源泉が全部で15あり、それぞれ色やにおい、効能が異なり、宿によっては硫黄温泉と単純温泉のブレンドなどの工夫を凝らしているところも。そんな源泉の違いを五感で愉しみながら、各宿自慢の露天風呂の眺望を渡り歩く。
2013年は10月27日~11月24日の期間で老神温泉紅葉ライトアップが初開催。昼間とは一味違った静かで幻想的な雰囲気も楽しめる。

老神温泉の朝市 4月から11月中旬にかけては、名物の朝市が開かれる。関東一とも言われる規模の朝市に、近郷の人々が持ち寄った地元の野菜自家製の加工品が並ぶ。秋にはきのこや、粟、キビ、クルミなど山野の恵みが豊かに揃う。浴衣姿の宿泊客が土産を求める姿は老神温泉の風物詩だ。毎日午前6時から7時30分に行われている。


神を癒した伝説の出湯 

老神温泉その昔、二荒山の神との戦いで傷を負った赤城山の神が、射掛けられた矢を抜き岩に突き刺したところたちまち湯が湧き出した。赤城山の神はその傷を癒し、二荒山の神を追い返した。そんな伝説の残る老神温泉郷。神を追った地「追い神」が転じて老神温泉になったと伝わる。各源泉で違いはあるが、代表的な源泉はアルカリ性単純温泉で、入浴すると肌がつるつると潤い、乾燥性皮膚炎や創傷に効果があるとされ、古くから「美人の湯」「傷治の湯」と讃えられてきた。

泉質:単純温泉(アルカリ性低張性高温泉)・単純硫黄温泉(中性低張性高温泉)など


吹割の滝、絶景が紅葉に染まる

紅葉の吹割の滝東洋のナイアガラとも称される吹割の滝へは、片品川の上流に向かって車で10分。片品渓谷の燃えるような紅葉に包まれる遊歩道をたどり、渓谷内の奇観を巡る。吹割の滝は、片品渓谷の豊富な水が、高さ7m、幅30mにわたって轟々と落下飛散するV字型の滝で、その規模と景観は国内に類を見ない名瀑だ。国の天然記念物であり、日本百名瀑にも指定されている。
遊歩道を下りて、上流側の川岸から、滝の間近まで迫って滝を覗き込むことができる。水量が多いためくれぐれも水難事故には気をつけて。直下には急激に川幅が狭くなり激流がたたきつけるように落ちる鱒飛びの滝に、獅子岩と呼ばれる岩壁群と、大迫力の絶景が続く。

絶景の渓谷と美肌の湯 >>老神温泉


※温泉の適応症について

赤城温泉は昔から皮膚病、胃腸病、高血圧、リウマチなどに良いとされ、老神温泉は美肌に皮膚病、リウマチ、に良いと親しまれてきた名湯です。いずれも湯治や休養に大いに利用されてきた歴史があり、また、両温泉とも、昔からかわらず豊富な源泉を掛け流ししています。
2007年から、温泉分析表の10年毎の改定が必要となり、現在はどの温泉でも昭和57年に定められた泉質名と泉質別適応症が掲示されています。
新しい分析表では、疾病と治療効果の因果関係が科学的に示されていない等の理由から、適応症としてリウマチや高血圧などは記載されなくなりました。ガイド書籍やWEBサイトによって泉質名や効能に違いがあったり、温泉旅館に新旧で内容の異なる二つの温泉分析表が掲示されるのはそのためです。
赤城温泉、老神温泉、それぞれの代表的な源泉について、現在の泉質別適応症では以下の通りとなります。

赤城温泉適応症:神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、きりきず、やけど、慢性皮膚病
老神温泉適応症:神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進


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