赤城山の四季

入門者もOK!赤城山・雪山登山ハイライト


2013.01.23(水)


 毎年12月の下旬から3月にかけて、赤城山の山頂は一面の銀の世界。山頂湖は全面結氷し、峰々は雪に覆われ、すっかり落葉した木々は樹氷に覆われて白く輝く。
 バスやマイカーでアクセスし、駐車場からすぐに雪山にチャレンジできるのは赤城山ならではの魅力。氷雪のフィールドを手軽&本気に楽しみつくす雪山登山のハイライトを紹介。


大沼から黒檜山


冬山入門に最適・雪の赤城山

 黒檜山や地蔵岳、長七郎山などは、冬登山の入門~トレーニングとしての利用価値が高い。夏山専門の方も是非、赤城山で冬山の楽しさを知ってほしいところ。これから紹介するメジャーなルートは、いずれも命に関わるような雪崩の心配はなく、滑落危険箇所もほとんどない。自分の実力・体力にみあった長さと高低差のルートを選んで、憧れの冬山への第一歩を踏み出そう。

 群馬県の中ほどに位置し、関東一円からのアクセスもよく、県道4号線を登ればそこはもう雪山だ。バスやマイカーを降りたらいきなり雪山登山が開始できる。各峰は広大すぎず狭すぎず。直登直帰ならば手ごろに、縦走ならばいささか忙しいが日帰り行程が作れる。冬枯れの木立ちに囲まれた白銀の斜面を進めば、冬山でしか出会えない満足感と絶景が待っている。

雲の中の黒檜山  何事もなければ楽しさいっぱいの雪の赤城山だが、やっぱり厳冬の雪山であることにかわりはない。天候の急変や突然の大雪もあり、転倒の危険も増す。尾根筋には雪庇だってできる。例えば右の写真は、大沼の天候は良いが黒檜山に雲がかかっている。こんなときは雪とガスで視界がなくなっていることもある。冬山装備を整えて、命を守るための基本はしっかり学んだうえで、天候の安定した日を見計らって経験者と行くべきだ。夏山経験しかない者の単独行はコンディション次第で自殺行為となる。気温はマイナス10度以下を想定し、防滴・防寒具は万全を期して。コンパスと山の地図、ヘッドランプ、予備の食料などの基本的な装備やビバーク装備は冬山ではいざというときに忘れたでは済まされない。

 また、せっかく来たのだからと無理に行程をこなそうと思ってはならない。天気が悪ければ、装備や体力を過信せず躊躇なく中止・撤退しよう。 そして、荒天の日の大沼湖上は、さえぎるもののない氷の大地に地吹雪が吹き荒れるハードコンディションだ。遭難の心配なしに過酷な冬山を体験できるのだから遊ばない手はない。思う存分、アイゼン歩行やキックステップ、耐風姿勢を試したり、はたまたツェルトでビバーク&ティータイムしてみたり。体力も食料も尽きたって大丈夫、すでに下山しているから安心だ!


冬の代表ルート

 赤城山は関東平野の端にそびえる山塊で、大沼や小沼を取り囲む複数の山の総称であり、入り口の鍋割山(1332m)から、大沼の先にある最高峰の黒檜山(1827m)まで、それぞれの嶺にそれぞれの楽しみがある。赤城山で雪山を満喫するならば、標高が1500mを超える山頂湖周辺の山々が対象となる。アイゼンは必携、雪の状況次第でスノーシューがはかどるところも多い。


黒檜山~駒ケ岳

 スリーシーズンの代表的ルート黒檜山→駒ケ岳は、冬も人気。土日の昼間であれば大概は踏み跡が続き、降雪してなければラッセルすることもあまりないだろうが、1月~2月には一気に腰下くらいの高さまで新雪が積もることもしばしば。一応はそんな状況も想定しておこう。
 大沼の標高1345mから、黒檜山山頂まで標高差480mを最短に近いルートで登るため、斜度は強め。アイゼンは最低でも6本爪以上必要だ。 黒檜山山頂~駒ケ岳は、なだらかな稜線歩き。冬場は見晴らしも良く、大沼の湖面を見下ろせばワカサギ釣りのテントが並ぶ。駒ケ岳からの下りは長い階段が設置されている。順調に進めば全体でおおむね4時間程度のルートとなる。雪が深い場合などで登りに予想外に時間をとられた場合は、駒ケ岳はあきらめて登ってきた道を引き返そう。

 登山口の大沼周辺も十分寒いが、山頂はさらに3度程低く風の影響で体感温度も下がる。また、大沼に日が差しても山頂が雲で見えない場合、吹雪いている事もあるので注意してほしい。黒檜山は頭ひとつ高いので、地蔵岳や長七郎岳は快晴のこともある。事前にルートを把握しているようなら、登山対象を変更するのもいい決断だ。また、入山直後の斜度が頂上まで続くので、しばらく歩いて体力・技術の面で不安を感じるようだったら、これも撤退と、他山でのトレーニングを検討しよう。


小沼を囲む4山を巡る

覚満淵のほとり 小沼から取り囲む峰々を見上げれば、北東から時計回りに、小地蔵岳、長七郎山と稜線が続き、一旦下って小沼から流れ出す粕川の沢、再びあがって朝霞嶺、最後に北山と続く。実はこれらの山々は、3万年前の噴火口だった小沼を取り囲む火口壁として成立したもの。なるほど、小沼と周囲の山はきれいな円を描いている。話のついでに、地蔵岳は同じく3万年前の溶岩ドームで、黒檜山や大沼は15万年前まで続いた噴火のあと、陥没してカルデラとなった部分だ。
 スタートは、県道16号線にある小沼駐車場(1490m)。16号線自体は冬季は閉鎖されるため、アクセスは4号線経由で大沼から回り込む。小地蔵岳(1573m)→長七郎山(1579m)と巡り、全面結氷して白く輝く小沼に下り、駐車場に戻る。高低もさほどではなく2時間もあれば踏破できる。冬枯れの木立ちの向こうに眺望が開け、すがすがしい道程が続く。バリエーションは、スタート地点をビジターセンターにして覚満淵(1360m)を経由し、やや急な斜面になるが北側から小地蔵岳を目指すルート(帰路含め60~90分加算)や、帰路に小沼の南端に降りてから再び朝霞嶺(1528m)~北山(1515m)と足を伸ばすルート(20~30分加算)がある。

 当サイト長七郎山の地図にはないが小沼の上が小地蔵岳。長七郎山に至るルートの途中でピストンとなる。前橋まるごとガイドの赤城山マップのルート(2)やルート(6)で大体のイメージがつかめる。


眺望の素晴らしい地蔵岳

赤城神社から地蔵岳 大沼をはさんで黒檜山と向かい合うのが地蔵岳(1674m)。視界をさえぎる他山が北の黒檜山以外になく、関東一円の山々や関東平野を一望できる、とても爽快な山。
 山頂一帯は広々と開け、TV局のアンテナや気象レーダーなどの施設が存在する。抜群の視界は電波業界からも御墨付きだ。広域地図を携行して眺望と照らし合わせても楽しい。条件がよければ東京スカイツリーも見ることができる。

 地蔵岳山頂への主要なルートは計5本。いずれもバス停や駐車場などからすぐ登山口にアクセスでき、それぞれ山頂まで60~90分程度のルートだ。
 【西側】4号線沿いから、新坂平と展望台下の2箇所の上り口があり、それぞれ1420m付近から。県道沿いではミズナラの木立ちにヤドリギが多くみられるので、登山口周辺では周囲を見上げてみよう。
 【北側】大沼に面した北面からは赤城少年自然の家と大洞駐車場からの2ルートで、1360m付近からの登山。大洞駐車場は赤城山第一スキー場の正面、登山口はスキー場の脇から。
 【東側】小沼に面した東面は、他のルートより急な斜面でコースは短い。大洞の駐車場や小沼駐車場を起点に八丁峠登山口(1490m付近)から登る。

 当サイト地蔵岳には、展望台下と赤城少年自然の家ルートの概略。前橋まるごとガイドの赤城山マップは、ルート(2)に八丁峠、新坂平と大洞駐車場からのルートがあるのでご参考に。


登山口・アクセスMAP

旅程について

 雪の赤城山のコースタイムについては、夏の1.5倍程度が一応の目安で、全行程ラッセルなら2倍程。代表的なルートの黒檜山→駒ケ岳コースでは、大体4時間程度。
 10時に開始で14時すぎに下山で日帰りの予定をたててみる。公共交通を使う場合、例えば東京駅から出発するならば、新幹線なら7時、在来線なら6時すぎが目安になる。東京駅→高崎→前橋と乗り継ぎ、8:45の関越交通バスで、あかぎ広場前に午前10時前に到着できる。赤城神社を過ぎて少し歩けば黒檜山の登山口だ。
 帰りのバスは17:20ビジターセンター発が最終。富士見温泉には18:05着で、そこからは市内のバスが20:35まであるから、温泉で温まってゆっくり夕食も大丈夫。

 マイカーでは、紹介したルートの登山口にはすぐ近くに無料の駐車場が整備されているので、冬仕様の車は大丈夫。 スタッドレスやチェーンがない場合は、富士見温泉からバスで山頂エリアにパーク&ライドとなる。お得な富士見温泉~赤城山ビジターセンター間専用往復乗車券もバス車内や温泉で購入できる。

 せっかくの真冬の赤城山、できれば複数のピークや全面結氷の湖上歩きまで楽しんでほしい。あるいは、さらにワカサギ釣りにチャレンジしてスノーシューも体験したいという場合などは、やはり宿泊をお勧めする。
 外は厳冬、中はポカポカの山頂エリアの旅館に泊まるのもちょっとおもしろい体験だ。大沼周辺にある青木旅館や大沼山荘などは、いずれも釣り客や登山客に昔から愛されてきた宿で、働く方たちは赤城山の自然に関する知識も豊富。
 山麓エリアでは、山頂へのバス路線からは外れてしまうが、電源サイトもある赤城山オートキャンプ場でベースキャンプ気分や、赤城温泉郷の1泊をはさんでも、ゆとりある旅程となる。


地蔵岳の樹氷 >>関越交通赤城山直通ダイヤ
 >>関越交通富士見温泉線ダイヤ


■関連施設
 青木旅館
 大沼山荘
 富士見温泉 見晴らしの湯ふれあい館


■関連特集記事
 赤城山登山ルートガイド
 赤城温泉特集(秋)
 キャンプ特集(夏)


【ご注意】本記事は、無謀な冬山登山をお勧めする記事ではありません。
冬山には安易な気持ちで入ってはいけません。残雪を踏んで冬枯れの山から大展望を見たい方は3月末までお待ちください。
冬の山を楽しく安全に体験してみたいなら、まずは赤城山山頂エリアでのスノーシューやネイチャーウォッチングから入りましょう。12月末~3月までは大沼・小沼・覚満淵や、各湖面に近い斜面の散策で、冬山を満喫できます。悪天候では地吹雪だって体験できちゃいますし、運がよければ(?)ホワイトアウトに近い状況にもなるでしょう。


赤城山の雪山登山については、例えば北アルプスなどの山々に比すれば、アクセスが良好、行程の長短・高度差を自分に合わせて選択できる、主要なコースには大きく滑落するような場所がない、雪崩の心配が少ない、といった点において、好天に恵まれれば手軽で安全度が高いといえます。しかし、冬山は強風・吹雪・大雪などで過酷なコースに一変します。安全第一を心がけ、装備・技術・体力に少しでも不安を覚えたら、迷わず撤退の判断をしてください。また、転倒などで怪我をして動けなくなった場合、単独では遭難に直結しますし、ビバークする装備・知識がなければ命も落とします。経験者の方でも極力単独行は避け、初心者の方は必ず経験者と入山してください。


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